ごあいさつ

『また春がきて想う』

 四季の移り変わりのなかで、桜は別れと出会いの季節に咲くことから、人々の記憶のなかにさまざまな形で根付いてきたものです。元来、お花見といえば梅だったものが桜に変わっていったのは平安時代の頃といわれており、奈良時代に編纂された万葉集では梅の和歌が桜の歌より多かったのが、平安時代に編纂された古今和歌集では逆転していることからもわかります。

 世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

 これはかの在原業平が詠んだ有名な和歌ですが、一気に咲いて散る桜の儚さがないことで得られる穏やかな日々よりも、その桜に向けて高揚し刹那の感動を味わう人々が心を奪われる様子を日本の風物詩として愉しみにしているというようにも感じられますね。

 私にとっての桜は満開に咲き誇るお花見での圧巻の姿よりむしろ実家のまわりの山々を彩る山桜のパノラマの方が印象深いです。もっと若い頃はあまり気にしたことがなかったこのような風景の1ページに目がいきふと立ち止まって感傷に浸るようになってきたのはここ数年のさまざまな経験から得た気づきのひとつかもしれません。

 さて、今年はここ数年ではなかった桜の開花の遅さとなり、入学式の時期にも間に合ったようです。また、県合唱連盟の総会も例年より早かったことも相まって“桜の季節”に実施することができました。私自身、この合唱連盟を一般的な社会感覚からズレたものでないように思い切った改革に着手してまいっておるわけですが、もちろん守っていくべきものも多いのですが旧態依然から脱却する、新たな視座からの意見を取り入れることの限界を感じてきました。そこで、今年度からは思い切って「外部理事」制度やすべての個人理事は推薦ではなく公募制とすることで、よりアクティヴかつ県内にとらわれない組織づくりを目指すこととしました。この「外部理事」制度は今後多くの地方の合唱連盟でもうまく運用できる制度として、当県がモデルとなっていければと思っております。すでに新体制での理事会、更にはさまざまなツールを活用したリアルタイムでの相談や作業が進んでいます。常にフレッシュな状態でそれぞれが責任をもって前進していける合唱連盟でありたいと願っています。

 まずはいよいよ開催が迫ってきた合唱祭、おかあさんコーラス大会です。今回よりチケットを有料とさせていただくことになりました。これはチケットを買ってお客様に来ていただくということで、お客様ご自身もより楽しみにしっかり聴こうと思っていただきたい、そして出演するみなさまにも有料のイベントなのだからより自分たちの音楽にこだわって素敵な演奏を目指して欲しいとの想いから決定いたしました。和歌山県の合唱音楽文化がますます充実したものとなっていけるようにこれからも合唱連盟としてさまざまなチャレンジをしてまいりますので、みなさまにもご協力をお願いできれば幸いです。

 和歌山県合唱連盟の新時代をともに歩んでいければと願っております。

 

 

2024年4月23日

阪本 健悟

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